[コウカン]


ソレは、有り得へん事で。
せやから。
コレは、夢。

目ぇの前にはベッドがあって。
仰向けに横たわるのは、銀の髪の。
うち自身やった。
眠っとる時はこないな顔なんかーなんて。
現実感も緊張感も薄ぅて。
見えるだけで、動くんも何も出来へんし。
さて、どないしよ?
眼下のうちは穏やかに眠っとって。
規則的に胸が上下して。
おんなしリズムの呼吸音がして。
そんなんしか見えへん。
定点観測かい……
そら飽きるわえぇ加減。
せや。
ココにうちがおるなら。
「ん……っ」
ベッドの上のうちが吐息を漏らして。
ぱたりと寝返りを打った拍子に、上掛けが滑り落ちて。
あぁ今夜はちぃっと冷えますのんに。
あかんなぁて。
そう思うはしから。
視界が、うちに近ぅなって。
屈んで、上掛けを拾い上げた手ぇは。
あぁ。
見えるはずあらへん。
なんや。
うち、アンタの中におったんやねぇ。
なーんや。
昔。
夜の間は何してはるのやて聞いた時。
アンタは何も、って云うとったけど。
せやったんか。
何や、あほらし。
つまらんわー。
……ホンマ、つまらん。
あぁも、気ぃ抜けて眠ぅなってきよった。
夢の中やのに。
けったいなコトやね。

夢も見んと、夢から覚めて。
一等先に、その所在を探せば。
いつも通り。
昨夜の夢の通りに、アンタはそこにおって。
「どうした」
静かな声の中に気遣いを感じて。
「夢見が…」
口を開いたものの。
アレは、良かったんか悪かったんか。
どっちなんやろか。
言葉にはせえへん方がええ様な。
「いや。気にせんとき」
何にしろ話すつもりはあらへんし。
アレは、ただの夢。
うちだけが知ってればええ、うちだけの夢。






2005/08/26
拍手用の極小話のハズが、気付けば無闇に縦長。
己的に見苦しいので通常小話にスライドです。
昨秋のアンケートで、二人の入れ替わりネタをご希望された方がいらしたのですよ。
きっとその方のご希望(つか一般的解釈)は、精神交換コメディだと思われますが。
ソレを念頭に、こんなのを書いてみました。
こういうのもアリと思っていただければ幸い。
ちなみに某Bの字のカリスマ美容師ドラマ主題歌(古)の影響も大きい事を告白しておきます(苦笑)。




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