[ 雫 シズク ]


この子供を守ろうと、そう心に決めた。


常に気を張りつめ、誰も何も信じないと人を寄せ付けず。
まだ年端も行かぬ子供が見せるのは、斜に構えた皮肉げな笑みばかりで。
それが、哀れだった。
たとえ相手が己を縛り利用する者でも。


それでも、夜は。
眠っている間だけは年相応に見えた。
精霊の力を得、この子供の従者となって後、自分に眠りは不要となったから。
だから、毎夜その寝顔を見守った。
この子供は、必ず夜半にうなされるから。

「イヤや、マスタぁ…」
毛布を握りしめ、眉根が寄せられて。
秀でた額に張り付いた髪を払ってやると、目尻から涙が零れた。
たったこれだけの事。
けれど、これで許せてしまった。


師父の敵だと、モンスターを殺すこの子供と。
一族と大地を蹂躙した奴らを殺した自分と。
何がどれ程違うのか。
元より諫める資格など己にあったのか。
既に精霊の声はなく、他に答えのあるはずもない。
己で判断するしかなかった。


柔らかな頬からそっと涙を拭い、
夜闇の中僅かな光で輝く銀髪を梳く様に撫でる。
指先が白くなる程握られた手に触れれば、
縋る様に掴まれた。
夜の間だけは子供らしく。


だから。
それを守るのだと。
心から。
自身に誓い決意した。






〜2004/09/08
一人語り系って、退屈かもとも思いつつ。
うちのガトとヘイゼルさんの関係上、前提条件になる事なので。
……たぶん。←思いつくままに書くので先の事に自信ナシ



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