[裏腹 ウラハラ/フタエノニ]


「なぁアンタ、今のまんまで満足なんか?」
うちとおんなしナリをしたのの背ぇに問いかければ。
「何の事どす?」
きっ、と見返す青の瞳は、あぁ、なかなかえぇよ。
「ホンマは欲しいのやろ、ガトの事」
イビリ甲斐のありそなソレを、間近く覗き込んで。
「なっ…! ナニ言うてはるん? アレは端からうちのモンや」
ついと顔を背けてもうた。
何やつまらん、もう逃げてまうん?
せやけど。
「せやろか」
まだまだ。
これからやわ。
くつり、とわざとカンに障る笑いをしたったら。
「何や?」
改めて睨み付けてくる。
あぁええよ、アンタはそない噛み付きそなのがええ。
「アンタ、自分がどんな瞳ぇでガトを見てるか気ぃ付いてへんの?」
せやから。
挑発しとるゆうのに。
「どない、て……」
あぁまたそないな顔で。
あかんわぁ、誘う気もないのにそんなん。
「して欲しいんとちゃいますの?」
「なにを……?」
アカン。
ホンマモンの天然やわ、コレ。
「決まっとりますわ、ナニに」
ぐいっと腰を抱いて引き寄せて。
空いてる右手を頬に添えて。
一瞬呆けたカオして見せるんが、もう。
せやけど、正気返った途端。
「あっアホちゃうんアンタ!」
腕突っ張って、うち突き飛ばして。
そのまま走って逃げてもうた。
「おぼこいわぁ」
両手を広げて笑ってしまう。
中身はうちとあんまり似てへんのやね。
何や可愛らし過ぎて。
ちぃっと困りますわ。
あーあ。
コレで手ぇ出さへんてなぁ。
アレはどんだけ木石なん?って話やわ。
「なぁ?」
て。
振り返って見やれば。
「余りヘイゼルを苛めないでもらおうか」
ってまぁヌケヌケと。
「どのツラ下げて言いますのやろ?」
お姫様がいなくなってから出てきよるって、なぁ?
「アンタがあの子に手酷い放置プレイかますのがあかんのや」
「俺は……」
って地面見て云い淀みよって。
何や一応自覚はあるんか。
せやのにコレって、あぁ煮え切らん!
「気付かへんのは罪やけど、判っててはぐらかすんは、最悪やわ」
うちのガトがこないやったら、即どついたる。
「うち、アンタは好かん」
いやアレも鈍さでいったら相当なのやけど。
せやけど。
「むしろあの子の方がえぇわ。何やいじらしいし」
アンタが何を思ってあの子を拒むんかは知らん。
そないな事、うちには関係あらへん。
ただなぁ。
「アンタがそない甲斐性ナシのまんまやったら、うちが浚ってまいますよって」
デカいばっかのを見上げて見下して。
「覚悟しとき」
びしり、と。
指で銃の形を作ってその胸板に突き付ける。
睨めた琥珀の目ぇは。
揺らぎも逸らされもせえへんで。
「それをヘイゼルが望むのなら」
あぁ。
何ちゅう自信やろか。
自分以外を選ぶはずないて、そう確信しとる。
しかもムカッ腹立つコトに、ソレは全くその通りなのやろ。
何や目眩してきそうやわ。
「卑怯モン」
「そう、なんだろうな」
ホンマに、卑怯や。
「正直に、あの子が大切や、愛おしいて、伝えたればえぇのに」
「それは、」
「あぁえぇよ、アンタには出来へんのやろ。全く、どいつもこいつも」
大体な。
あの子かて、強引に押し倒して既成事実作ってまえばえぇのや。
うちの爪の垢でも煎じたろか!
あぁ!
「アホくさくてかなわんわ」
ホンマに。
知れば知る程アホらしぃ二人やわ。
お互い純情にも程があるんちゃいます?
ママゴトやあるまいに。
ホンマに。
あぁ付き合うてられへん。

せやからて。
…………ちぃっと。
うちのガトに会いたい、思うてしまうのは。
何や、悔しいなぁ。










〜2007/02/13
Wヘイゼルその2です。
ようやっと。ゴメン、正直ちょっと忘れてた(苦笑)。
最後、ガト編は忘れないうちに書きたいです。
ちゃんとヘイゼル様を向こうのガトの所へ返さないといけないしね!
って引っ張る程内容のある話じゃないんだけどねー。






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